【今日のアルバム】Coldplay - 『Everyday Life』(2019)
とんでもなく素晴らしい出来。
今年の11月22日って何の日だったか覚えてますか?
そうですね。コールドプレイの新作の発売日でしたよね。
良い夫婦の日だと思ったそこのあなたは今すぐ上のリンクからCDを買いましょう。
って思ったらCDの方のリンクが何故か表示されないからレコードにするわ。
思えばこの4年間、コールドプレイのアルバムが出ない月日によく耐えられたと思う。
二年間で一気に2枚のアルバム出すなんてことするからだよ全く。
ところで、コールドプレイという名前を聞いて普通の人はどう思うのだろうか。
ちなみに友達にコールドプレイが好きって言ったら「渋っ」て返ってきたぞ。
まあ、世間の認識は恐らく『Viva La Vida』以降のちょっと弾けてるロックバンドって印象なのかな。
ちなみに俺もそっち側だ。
なんたって俺は2010年代っ子だからね。
『Yellow』より『A Sky Full Of Stars』とか『Hymn for the Weekend』の方が絶対多く聴いてる。
一応ほぼ全てのアルバムは聴いてるけど。
まあ、音楽好きからしたらコールドプレイは批判の対象になりやすいバンドだと思う。
いや、贅沢言いすぎじゃないですかね?
だって今活動してるバンドで、批評家からもとても評価の高いアルバムを作ったことがあって、さらに一般的人気も兼ね備えているロックバンドって他にいないよ、マジで。
アークティック・モンキーズとかいるじゃんとか思う人もいるかもだけどチャート順位とか見たら比べ物にならないし。
確かに2010年代に入って出された3枚のアルバムは『Viva La Vida』以前に比べるとアルバム全体の出来としては微妙だとは思う。
けど『Paradise』とか『A Sky Full Of Stars』、『Hymn for the Weekend』、『Adventure of a Lifetime』などヒット曲自体は連発しており、決して酷評されるような出来が続いていたわけではないと思う。
まあ、EDMを取り入れたり、コールドプレイは変わってしまったのかと思った人も多いだろう。
しかし、今回発表された新作、『Everyday Life』はそんな最近のコールドプレイに違和感を覚えてた人も良いアルバムだと思うはず。
しかも、コールドプレイが以前のスタイルに戻ったかというより新たに進化したともいえる内容なんだ。
今作のコンセプトは「誰にでも普通の1日は訪れる」みたいな感じみたいですね。
あれ?、この時点でいつものコールドプレイとは違う感がするぞ。
僕ら2010年代っ子の知ってるコールドプレイはアヴィーチーをプロデューサーにしたり、チェインスモーカーズとコラボしたりするような派手なバンドじゃないんですか。
と思いながらですよ、1曲目の『Sunrise』から再生していきます。
1曲目は特にコメントも思い浮かばないインスト曲。
からの2曲目『Church」!
Coldplay - Church (Lyric Video)
いやー、これは良い。決して派手な曲では無いけれどアルバムの実質的な1曲目としては良い感じ。今回のアルバムは尻上がりなタイプだなと確信。
そっから『Trouble In Town』、『Daddy』、『WOTW / POTP』と続いていくんだけど
どうした、コールドプレイ
なんかいつもと雰囲気違うやん。落ち着けって、いや音楽は落ち着いてるんだけどさ。
これは初期の頃ともちょっと違うぞ。
『Arabesque』とかもシングルでは出てたけど、あんまりちゃんとは聴いてなかったからアルバムの流れで聴くと全然違う。
やっぱアルバムで聴くと全然違うね。
大体、コールドプレイのボーカルのクリス・マーティンの書く詩っていうのは僕とあなたの2人で構成されてることが多いと思うんだ(多分)。
けど、このアルバムのコンセプトにもある通りなんだけど、いつものコールドプレイの恋の歌や「あなた」を全肯定するような歌の歌詞じゃなくてクリス・マーティンが本当に今、伝えたいこと、歌にしたいことを歌詞にしている気がする。
前半部分の『When I Need A Friend』が終わった時点でシングルヒットしそうな曲はほとんどない。かろうじて『Daddy』かな。と、思ってたらシングルになってたわ。
Coldplay - Daddy (Official Video)
シングルヒットするかと言われたら微妙だけどとりあえず良曲ってことは伝えたい。
さあ、後半の『Sunset』にいくぞ。
最初の曲は『Guns』。
ええやん。歌詞と曲調がぴったり合ってる。
最後の歌詞が心にしみるね。
「全てがおかしくなっている。君以外のみんなも。全てがファッキンクレイジーになりつつある。多分、僕もおかしくなってるんだ。」
で、後半2曲目の『Orphans』だ。
キター!。ようやく明るい曲がきたで。
Coldplay - Orphans (Official Video)
タイトルの意味は「孤児」。
あれ、明るい曲調の割にテーマ重い.....?
歌詞は明るい曲に似合わず暗い。『Ghost Stories』なんかとはレベルの違う暗さ。
だけど、何でこんなに曲と歌詞があっているように感じるだろうか。
紛争の悲惨さを思い知らせてくれる非常に素晴らしい曲。
多くの命が失われているといったスケールの大きい話では無く、より身近に自分たちが共感できる素晴らしい歌詞だと思う。
これは、「誰にでも普通の1日は訪れる」といった今作のコンセプトや『Everyday Life』といったタイトルに合致している。
この『Orphans』以降の曲も聴き心地が良く、滑らかに時間が過ぎていく。
アルバムとしては最後の2曲である『Champion Of The World』、『Everyday Life』もかなり良い出来だ。
Coldplay - Champion Of The World (Lyric Video)
いやー。素晴らしい。ブラボー。
もしかするとこのアルバムを聴いて地味だと思う人もいるかもしれない。
確かに派手さは無いし、シングルヒットするような曲があるわけでもない、最近のコールドプレイからすると異色と言えるアルバムだ。
でも、コールドプレイが世界に対して訴えたいこと。それが音楽と共にストレートに伝わってくる。一つもいらないものは無いし付け加えるものも無いアルバム。
このアルバムに派手でポップな要素を付け加えてもそれはただ邪魔になるだけよ。
以前から実験作になると言われ続けてきた今作だが、単なる実験作で終わらない素晴らしいアルバムだと思う。
もうね、めちゃくちゃ聴いてる。さっきも聴いてたんだけど気づいたら2周半してたからね。
コールドプレイがまだこんな良いアルバムを作るんだと思った最近のコールドプレイをよく思ってなかった人も多いだろう。
批評サイトとか見てて面白かったコメントがあるんだけどさ。
「カニエ・ウェストよりコールドプレイの方が良いアルバムを作る時が来るなんて」
これはマジで吹きそうになった。
いや、俺はカニエのアルバムも嫌いじゃないし、むしろ好きなんだけど、この2つのアルバムの違いって地に足のついた感覚があるかどうかな気がするんだよね。
カニエの『JESUS IS KING』は宗教色がかなり強くて、よく言えば壮大なんだけど、悪く言えば大袈裟という感じ。
この『Everyday Life』も宗教色は割とあるんだけど、タイトル通り日々の生活に根差したという前提の上でのキリスト教という感じだから、嫌みが無いんだよね。
別にキリスト教信者じゃないからこれ以上は特に何も言えないけど「ハレルヤ」の使い方とかも対照的。
カニエは強迫的で恐怖すら感じそうだけど、クリス・マーティンは穏やかに1日の終わりを告げるが如く、神に賛美を捧げているよね。
自分はコールドプレイの方が好きかな。
とりあえず、今作でコールドプレイを見直した人は2010年代のコールドプレイの再評価をお願いします。
Coldplay - Everyday Life (Official Lyric Video)