【アルバムレビュー】スピッツ ‐ 「名前をつけてやる」 (1991)
僕の家はテレビが無いから見れなかったけど。
スピッツというのは不思議なバンドで、音楽好きからも、音楽をあまり聞かない人からも好かれるバンドだ。
多分に漏れず僕もスピッツが大好きなのだが、僕が好きなスピッツというのは一般的なパブリックイメージとしてのスピッツではなく、初期の暗く、もの悲しい世界観なのだ。
今回は、その初期のスピッツの中でも僕が愛してやまない2ndアルバムである「名前をつけてやる」の紹介をしたい。
1曲目 「ウサギのバイク」
僕はアルバムの1曲目は静かに始まっていくような曲の方が好きなのだが、そういう僕にとってこの始まりは大好物。
特に好きなのは、「脈拍のおかしなリズム～」と盛り上がっていくところが大好きだ。
今気づいたけど、歌詞に「優しいあの子」って入ってるね。
2曲目 「日曜日」
日曜日というとスピッツファンは「運命の人」の歌詞の一節を思い出すかもしれないが、こちらも負けず劣らずの名曲である。
歌詞はよく読み取れないものの、途中の女性（魔女？）の笑い声や歌詞の雰囲気からファンタジーな感じだ。
この曲の間奏に似たメロディーをサイゼリヤで聞いたことがあるのだがあれは何だったのかな。
1曲目で静かに盛り上がった後にぴったりの疾走感のある曲だ。
3曲目 「名前を付けてやる」
表題曲でありスピッツの中でも歌詞の奇妙さが取り上げられることの多い曲である。
「むき出しのでっぱり」、「ふくらんだシャツのボタンを引きちぎるスキなど探しながら」・・などなかなかヤバい歌詞が含まれているこの曲だが、名前をつけてやるとは何に名前をつけるのか。
この答えは人それぞれだと思うし、それでいいのだと思う。
4曲目 「鈴虫を飼う」
いい曲だよなあー。
サビの歌詞とメロディが調和しており個人的にこのアルバムでもかなり好きな曲だ。
自分が自分でありたいと願いながらも、周りに流されていく。そんな悶々とした秋の夜の情景が思い出される。
5曲目 「ミーコのギター」
このミーコというのが誰なのかは諸説あるようだがそれは置いといて。
この曲には僕がスピッツの中でも屈指で好きな歌詞の一節がある。
「憧れるだけで憧れになれなかった」
いつ聴いても胸に響く。
The Stone Rosesの「憧れられたい」もそうだが、オルタナティブロックというのは持たざる者が表現するツールとしてはこれ以上のものは無い。
前2曲が落ち着いた曲だったのに比べて「日曜日」のように疾走感があり、アルバム全体のバランスが取れている。
そして次の大名曲へとスムーズに繋がっていくのだ。
7曲目 「プール」
このアルバムで最も好きな曲が「プール」だ。
ファンからも人気がある曲なので一々歌詞については語らないが、メロディ、構成、歌詞、どれをとっても素晴らしく、非の打ち所がない。
初めてこれを聴いたときにはあまりの素晴らしさに一日中、夢中で聴いていた。
僕はシューゲイザーというジャンルがはっきり言って苦手なのだが（というかMy Bloody Valentineが苦手）、草野マサムネがRideから影響を受けたというシューゲイザーのサウンドを上手く昇華させている。
この曲は僕の人生の重要な曲であり続けるだろう。
8曲目 「胸に咲いた黄色い花」
子気味良いイントロからキャッチーなサビと文句のつけどころの無い名曲。
このアルバムではかなりポップな曲で、「プール」の後に相応しい。
まあ、歌詞は相変わらず不穏だが・・。
9曲目 「待ち合わせ」
不気味なイントロから始まるが、メロディはポップ。
しかし、サウンド自体はヘヴィであり、このアルバムの中では最も重めな曲である。
個人的にも好きな曲である。というかこのアルバム苦手な曲とか一切無いんだけどな。
10曲目 「あわ」
1stアルバムの雰囲気に近い曲であり、ゆったりとしている。
アウトロが一分半近くもあり、繰り返されるリフとベースライン、それに木琴（？）なんかも加わり、味わい深い。
草野マサムネはでっかいお尻が好きなのか・・。
11曲目 「恋のうた」
単純にいい曲である。
歌詞がいいね。
「きのうよりもあしたよりも今の君が恋しいから」やサビの歌詞なんてよくこんなに純情な気持ちを表現できるなと思う。
だけど、ミルク色の細い道って何ですかねえ、草野さん。
スピッツの歴史上でもかなり重要な曲であるメンバーも語っている曲である。
andymoriとねごとのカバーも良かった。
12曲目 「魔女旅に出る」
この名盤を締めるのにふさわしい名曲である。
このタイトルと幻想的な間奏からとてもファンタジーな気分にさせられてしまうが、特に歌詞には魔女とかは登場しないんだね。
将棋の藤井君が好きな曲でこれを挙げていたね、確か。
これほどまでの名盤、日本人は全員聴くべきではないだろうか。
わずか38分強とは思えないほどの密度の濃さ、構成、そして楽曲のクオリティの高さ。
日本のオルタナティブロックの歴史を開いた音楽好き必聴のアルバムである。
