【アルバムレビュー】The Strokes ‐「Is This It」 (2001)
The Strokesというバンドをご存じだろうか。
2000年代初期に起こったガレージロックリバイバルの旗手とされ、21世紀のロックの未来を一身に背負わされたバンドである。
そのバンドの奇跡のような1stアルバムがこれから紹介する「Is This It」である。
アルバム発売前からNMEを中心としたメディアの高まる期待に対して、これがそれ?というタイトルで答えたのが大物バンドの気概を感じさせてくれる。
それでは一曲ごとにその軌跡を見ていこう。
1曲目 「Is This It」
ゆったりとしたリズムから流れてくる、けだるいような声。
アルバムの一曲目というのは重要なもので、ここで躓くとアルバムを通して聴こうと思わないものだ。
事前の評判からロックンロールアルバムを予想していると肩透かしをくらうようなサウンド。
そのため、この曲をあまり評価しない声も見られる。
しかし、僕はこの曲が大好きだ。
この曲からはボーカルのジュリアンのメロディセンスであったり、天性のロックシンガーとしての声の魅力を存分に感じる。
最初の乾いたドラムの音や途中から加わるベースラインも非常にクールだ。
アルバム全体としては映画の導入部のような役割をきっちりと果たしながら次の曲へと移っていく。
2曲目 「The Modern Age」
ここから、段々と加速していくようにシングル曲の「The Modern Age」に入っていく。
子気味良いリフから静かにボルテージが上がっていくこの瞬間は何物にも代えがたい。
3曲目 「Soma」
サウンド自体は先ほどと全く変わらない、ガレージロックの心地よさに身を預ける。
4曲目 「Barely Legal]
先ほどとほとんど変わらない曲調。初めてこのアルバムを聴いたとき曲が変わったことに気づかなかったほどだ。
改めて聴くと、サビのメロディが結構ポップに感じる。ジュリアンのポップセンスは過小評価されてるのではないかと感じるこの頃。
5曲目 「Someday」
この曲のメロディを嫌う人なんてこの世に存在するのかという具合に非常にメロディに優れた曲。
歌詞も素晴らしく人気の高い曲だ。
6曲目 「Alone , Together」
曲自体はそこまで変わったことは無い。
だが、「Someday」と7曲目の「Last Nite」をつなぐ良い働きをしている。
7曲目 「Last Nite」
僕が初めてストロークスを知ったきっかけはこの曲のPVだ。
ストロークスがガレージロックリバイバルのバンドだということは知っていた。
しかし余りにもスカスカな音に驚愕を覚えた。「これが2001年の音楽なのか?」と。
今聞くと簡素なのだが、これをクールにできるのはストロークスくらいしかいないんじゃないのかと思える。
ガレージロックリバイバルの到来によって多くのバンドが飛び立った。
しかし、ここまでガレージロックに忠実にかつアーティスティックに表現できたバンドはいないのではないか?
21世紀のロックアンセムにふさわしい名曲。
8曲目 「Hard To Explain」
「Is This It」のすごいところの1つが後半にかけて、曲のクオリティが増していくところなのだが、この曲も人気の高い曲だ。
曲の構成自体は普通なのに癖になってしまうこの感じ。素晴らしい。
あと個人的にかなりPVが好きな曲でもある。
9曲目 「New York City Cops」
またまたまた人気曲だ。アメリカ版には載ってないらしい「ニューヨーク市警はそんなに賢くないね」とサビで連呼してしまう問題曲だ。
この曲で注目すべきはそのキャッチーなサビだろう。いつか合唱してみてえ。
ジュリアンのセンスが爆発しているこの曲を聴けないなんてアメリカ人は不幸だな。
代わりに「When It Started」でも聴いとけ。
10曲目 「Trying Your Luck」
なんとももの悲しいメロディ。
しかし、ブラジルでのライブではこの曲の演奏中に客は大盛り上がりでジャンプとかしてて、YouTubeのコメント欄で突っ込まれてたな。
個人的にこういう悲しい曲はどストライク。ジュリアンにはまたこういう曲も作ってもらいたい。
ちなみにアークティック・モンキーズのアレックスが1番好きなストロークスの曲はこの曲らしい。
11曲目 「Take It or Leave It」
ついにラスト!
この名盤のラストを飾るのはアルバム中1番激しいナンバー。
前まではライブの最後はこれで締めてたのに最近やらないんだよね。
結構最後まで盛り上がりどころがあり、1曲目の「Is This It」とは対照的な曲でもある。
このアルバムの恐ろしいところは「音自体は古く聞こえるのに新しく感じる」ところだ。
ジュリアンはアルバムの制作中メンバー1人1人に細かく演奏の指示を出していたらしいし、楽器自体は60年代のものと変わらないものだけど技術は最新のものにこだわっていたそうだ。
この話を聞いたとき、この不思議な感覚が生み出されていたわけが分かった。
「現代にタイムスリップした60年代のバンドが作るようなものをイメージした」というのはジュリアンの言葉だ。
これは同じガレージロックリバイバルの旗手といっても徹底的にアナログのものにこだわったThe White Stripesとの決定的な違いだろう。